幼児教育にも熱心に取り組んでいらっしゃる、中本ちはるさんから、今回のワークショップで子供たちと一緒に感じとりたい、羊という生き物について、素敵な物語が届きましたのでこちらで披露させていただきますね。
羊の毛。
お山の上のパネテリエというところに仲間と共に暮らしている羊のハマルとバラニーが居ました。
ハマルは大きな角を持っていてお山の皆んなを守る良きリーダーでした。
バラニーは年老いていて誰よりも沢山の事を知っている優しい瞳の長老でした。
ある春の日、ハマルとバラニーはチョキンチョキンと鋏で毛を刈られました。
ハマルのご自慢のたっぷりとしたツヤのある毛は無くなり、何か大切な物を無くしてしまった気分でした。
バラニーを見ると年老いて小さく細かった体はますます小さく見えました。
しかしバラニーは何でもなさそうにしています。
むしろ清々しく嬉しそうにも見えました。
ハマルは聞きました。なぜそんなに嬉しそうにしているんだ!
おれはぽっかりと胸に穴が空いた気分なのに!
バラニーは言いました。なぜそんなに怒っているんだい?
今まで動かせなかった尻尾が、ほらこんなにも自由に動くのに。
ハマルは目を丸くして尻尾を動かしてみました。
尻尾はくるくる楽しげに揺れました。
うんちもおしっこもしっぽを上げて上手に出来ます。
バラニーは言いました。
それに体が軽いから飛び跳ねて、どこまでも風と走って行けるよ。
ハマルとバラニーは一緒に飛び跳ねて走りました。
背中とおなかに心地よい風が吹き抜けました。
それからハマルとバラニーは大きな木のしたで寝そべりました。
木陰のひんやりとして心地いいこと、土も草もふんわりとして2人のおなかを優しく受け止めていました。
ハマルはもう悲しくありませんでした。
このオレもいいかなと思いました。
そんなハマルをバラニーは優しい瞳で見つめ、うとうとと2人眠ってしまったのでした。
ハマルとバラニーはお山の上のパネテリエで今も仲間達と暮らしています。
牧場主のたろうさんが2人を抱き抱え息を合わせながら鋏で丁寧に毛を刈っています。
今日はハマルとバラニーの息づかいを感じながら、2人の毛で羊毛ボールを作っていきましょう。
ちはるさん、ありがとうございます。
普段一緒に過ごしていて、本当のお話のように思います。
彼らと普段からこんなお話をしていること、なんでわかっちゃったんだろうと、もっと色々お話してみたくなりました。
たろうより

